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通信技術の発達を振り返ってみる

今でこそ、電話やインターネットで世界中の人と瞬時に情報伝達が出来るようになっていますが、それはせいぜいここ200年程度の事。

昔はみんな、人力でコツコツ頑張っていたわけです。

「通信技術の発達」により、皆さんに記事を読んでもらえる事の幸せを噛み締めながら、今回はその歴史を振り返ってみたいと思います。

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原始の通信方法

いわゆる伝令による「伝言ゲーム」が、おそらく最古の通信です。

文字が存在しない社会において、情報を記録するメディアは脳みそしかないわけで、当たり前ですね。

それこそ原始時代から、「ボスがご飯もってこいって言ってるよ」とか「あっちにマンモスがいるよ」みたいな感じの伝言は、間違いなくあったでしょう。

しかし、この原始伝言ゲーム式通信には、通信として致命的な欠陥がありました。

正確性、情報量

・伝達する距離が長いと、途中で内容を忘れちゃう
・あんまりたくさん覚えられない

伝達速度

・人の移動速度より早くはならない
・届いた情報が本物か分からない。
→確かめに行かせると、3倍の時間がかかっちゃう

これらの解決には、二つの発明が必要でした。
一つは文字

もう一つは狼煙(のろし)です。

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文字の発明と道路の整備

人類の三大発明の一つ、文字の発明により、人類は「お手紙」を送れるようになります。

これにより、情報の正確さと情報量は飛躍的に向上しました。

また、サインや印鑑、封蝋等を駆使し、その情報の信頼性も大幅に向上しました。

封蠟

伝達速度に大幅な進化はありませんでしたが、馬を利用したり、道路を整備し駅伝制を敷く事により、徐々にスピードアップしていきます。

古代ギリシャでは、伝令にまつわる有名な逸話があります。

紀元前490年、ギリシャ連合軍とペルシャ遠征軍はマラトンで衝突した。

倍以上の兵力のペルシャに対し、ギリシャはよく戦い、勝利を収め、勝利を伝えるべく伝令がアテネに遣わされた。

伝令は、アテネまでの42kmの道のりを完走し、「我が軍勝てり」と告げると、そのまま息を引き取った。

この出来事が、後のマラソンとなったのは言うまでもない。ー民明書房風ー

ヘトヘトになった伝令フェイディピデス氏

伝令とは、これほどまでに過酷なものだったのです。

明確に通信速度向上を目的として道路を整備したのは、紀元前5世紀頃の大帝国、アケメネス朝ペルシャでした。

広大なペルシャの版図

大王ダレイオス1世は、その広い領土を統治する為に、領土を36区画に分け、それぞれに太守を置き統治させました。

とはいえ、ほっとくと不正・謀叛の元になるので、「王の目、王の耳」という監察官を定期的に派遣し、監視していました。そして、そのスピードアップの為に、「王の道」と呼ばれる国道を整備し、移動速度の向上を図りました。

結果、王の道を利用しての伝令は、一日で300km以上を進むことが出来たとも言われています。

以降、道を整備する事は、ローマをはじめとして、非常に重要な国家事業と考えられるようになっていきました。

この通信方法の系譜は、後に自動車や飛行機等の移動手段の進化と道路や鉄道等のインフラ整備により発展し続け、今でも主要通信方法の一つです。

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超高速通信テクノロジー

さて、こうして通信は少しずつ速度と正確性を増していきますが、どうしても緊急時には間に合いません。

一番需要のある緊急メッセージは「敵が来た!」だと思いますが、物理的な移動を伴う通信では、敵と同じスピードしか出ません。

これでは間に合わんのです。

そこで、ペルシャでは、王の道に一定間隔で高い塔を設置し、声のよく通る人が大声でバケツリレー式に伝言を伝えていました。

これは、周りに丸聞こえであるという欠点があるものの、そこそこの情報量をマッハで伝えて行くわけで、なかなかのスピードです。

教会などの、鐘で時報を伝える方法も同じタイプの音速通信です。

そして、それよりさらに早い通信が、光速度通信の走りとも言える、「狼煙」です。

狼煙は、基本的に煙の有無で情報を伝えますので、その情報量は0か1かの2進法、つまり1bitしかありません。

ですので、煙の意味は事前に取り決めをしておく必要があります。(煙の色とかも使い分けてたようですが)

しかし、その伝達速度はまさに電光石火。これもリレー式で遠方まで伝達していくわけですが、調子が良ければものの数分で100km先まで届いたと言われています。

狼煙と同じタイプの通信方法には、万里の長城における灯明があります。

これも理屈は一緒で、異民族が攻めてきたら、順々に灯を点けて、とりあえず異変を知らせる仕組みです。こちらも、あっという間に数百km先まで情報が届いたと言われています。

こういった通信は、中継のロス以外は光の速さで伝達されるため、何しろ速い。

ですが、情報量そのものはあまりにも少なく、警報や合図としての用途にしか使えません。

そのため、緊急度に合わせて、伝令や手紙と併用しながら用途に分けて運用されていました。

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optical telegraphy

狼煙や灯明のような通信は、「optical telegraphy」と呼ばれます。直訳すると、「視覚による通信」みたいな感じです。

つまり、目で見て情報を取得し、次の人へ目に見えるように信号を送るという事です。

目で見る=光を媒介にするため、スピードは比類ない物ですが、課題は「情報量の少なさ」と「中継所の維持コスト」でした。

中継所の維持コストはまぁ仕方ないとして、望遠鏡が発明されると、送信出来る情報量は大幅に改善されます。

望遠鏡によって肉眼を超えて見られるようになった結果、文字コードを送信できるようになります。この代表的なものは、腕木通信と旗振り通信です。

腕木通信

腕木通信は、18世紀にフランスで考案されました。

ロープの操作でH型の腕木を自在に操り、事前に取り決めておいた文字コードを伝えるものです。

こんな感じ

文字を伝えられるという事は、文章を伝えられるという事。その情報量は一気に跳ね上がりました。

その優秀さから、腕木通信は欧米各国で瞬く間に採用され、総延長1万4000kmもの腕木通信網が構築されました。これは、民間人もお金を払えば利用する事ができ、相場の情報を送る時とかに役立ちました。

一見原始的に見えるこの腕木通信は、19世紀半ばにモールス信号に取って代わられるまで、欧米の通信の中心として活躍していました。

旗振り通信

ガラパゴス国家、日本で特に発達した通信手段がこの旗振り通信です。

江戸時代中期に紀伊国屋文左衛門によって米相場を伝達するために色のついた旗を振ったのが起源と言われています。

やがて、旗を振る方向と位置、回数に意味を持たせ、米の価格を正確に伝えられるようになりました。

旗振りは大正の初期まで現役でした。

熟練した旗振り師が通信した場合、時速720kmで情報を伝える事ができました。

飛脚を保護するために、関西方面では幕府に禁止される程、熟練者による旗振り通信は優秀な通信方法でした。

幕末にはヨーロッパから腕木通信も伝わって来ましたが、旗振り通信で十分事足りていたため、不採用となりました。

日本の通信の進歩は腕木通信を飛び越して電信に移行していく形になります。

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電信という革命

視覚による通信は、優秀ではありましたが、産業革命以降の世界ではやはりいくつか不満点がありました。


・悪天候だと使えない
・熟練者を中継所に常駐させるコスト
・海を渡れない

などです。

そこで、電気を使った様々な通信方法が科学者たちによって考案されます。

代表的なのは、モールス信号です。電流のON・OFFで「トン、ツー(・、ー)」と音を流して情報を伝える仕組みです。

SOSは「・・・、ーーー、・・・」です。いざという時の為に覚えておきましょう。

この原理は、今のデジタル通信にも言えることですが、要するに、超速い狼煙なわけです。

狼煙は1bitの情報を送るのに数分かかっていましたが、このモールス信号なら、電線さえ繋がっていれば、1秒で2~3bitは送る事ができます。

さらに、電波の発見により無線通信が開発され、情報のやり取りはどんどん便利になっていきす。

アナログとデジタル

「アナログ」というのは、時代遅れみたいな誤ったイメージがありますが、正しい意味は、ある情報を「連続的な量」で示す事を意味します。

一方の「デジタル」は、ある情報を「離散的な量」で示すという意味です。

このままでは意味不明ですね。

アナログとデジタルの違いは、時計をイメージするともうちょい分かりやすいです。

デジタル時計の秒針は、「1秒、2秒、3秒…」とパッパッと数字が変わっていきます。1秒と2秒の間には何もありません。

それに対し、アナログ時計は、スムーズに針が動いていきます。
知覚できるかどうかは別として、アナログ式時計の針は、細かく見れば、「1.000…1秒、1.000…2秒、…」というようになめらかに連続して時間の流れを表示しています。

そういう意味では、自然の状態というのはアナログですし、情報量としてはアナログの方が多い事になります。

デジタルとアナログのデータの違い

デジタルも、どんどん段階を細分化していけば、見かけ上はアナログと遜色無いものになりますが、データが膨大になり過ぎます。

人間が処理できるのは、せいぜいモールス信号程度。文字よりも複雑な音や映像は人力では変換できません。

例えば、音の情報量を考えてみると、5分くらいの音声のデジタルデータは50MBくらいになります。

だいたい4億桁の0と1に変換されているわけで、人間が気合でなんとかできるレベルではありません。

逆に、アナログのメリットの一つは、情報を電気信号に変換する機構が比較的簡単にできるため、直感的な入出力が可能な点です。

昔の電話はアナログ式で、要は空気の振動をそのまま電気の波形に変換する事により、相手に音声を送っていました。


薄い膜を音で震わせてコイルの電流を変化させている感じ
参考:http://www.geocities.jp/hiroyuki0620785/intercomp/bellstell.htm

これらの詳しい原理はYahoo知恵袋などに任せるとして、このアナログ式通信にも弱点はあります。

それは、ノイズに弱い事です。送っている途中で、例えば雷などの影響で波形が変わってしまうと、そのままノイズになってしまいます。

一方のデジタル式は、要は0か1かが伝われば復元可能なので、劣化はほぼない事になります。

やがて、コンピューターが発達してくると、デジタル式通信の最大の難関であった、データ変換時の膨大な計算を克服できるようになります。

そうして、情報の入出力はアナログ風でありながら、通信方法はデジタル式という、いいとこ取りの通信が実現されました。

我々が普段何の疑問もなく使っているインターネットやスマホは、こういった歴史の最先端なのであります。


狼煙の時代から見てみると、技術革新が起こるスパンは確実に短くなってきています。

もうあと何年かしたら、まったく新しい通信の仕組みが出来ているかもしれませんね。

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