戦争において戦力に圧倒的な差がある場合、弱い方が取るべき最も有効な戦略は、「ゲリラ」であります。
地の利を活かし、市民に紛れ、様々な方法でチクチクと損害を与えて優勢な相手の神経と体力をすり減らしていくゲリラ戦。
物量と技術が端的に結果に表れてしまう軍隊同士のぶつかり合いを避け、勝負を自分の土俵に持ち込むわけですね。
その戦術の一つがブービートラップです。
ブービーとは「まぬけ」という意味。
隙を見せたまぬけを仕留めるブービートラップには、開発者の色々な工夫が見て取れます。
地の利を活かす
一般的なイメージに近いブービートラップは、草木の影にワイヤーを張って発動する罠や、落とし穴等の、地の利を生かして意表を突くタイプのものです。
罠を張るエリアが自分の支配下にないといけませんが(規模はどうあれ)、侵攻してくる相手に与える恐怖心はバツグンです。
これは、ブービートラップの一般的なイメージに最も近いもので、あのベトナム戦争でもたくさん使用されました。
落とし穴。落ちるとグサリ。
虎バサミ。
トゲ付き丸太が降ってくるやつ
うっかりしてるとトゲ付きローラーに足が巻き込まr
川の中にワイヤーを張るという鬼畜トラップ
なお、トゲ系トラップにはウンチが塗られており、傷を負った兵士は深刻な感染症になります。
草木の茂った土地にこういうのが設置されてるわけで、見抜けるわけないですね。
また、地面に埋めてある地雷なんかもこちらの種類と言えます。
「対人地雷全面禁止条約」という国際条約があるものの、米中露は批准していません。
心理的な盲点を突く
このパターンは、様々なバリエーションがありますが、罠を隠すのではなく、罠に見えないものに罠を張るというのか原則です。
最も基本的なのは、次のようなやつ。
他にも、
・水道の蛇口をひねったら
・懐中電灯を拾って点けたら
・戸棚を開けたら
・ライターを拾って点火したら
・落ちている空き缶を蹴ったら※アメリカ兵に効果大
等々。
習慣を利用したブービートラップでは、罠が発動するかは相手の行動に依存しています。
そのため、不発に終わる事も多々ありました。
興味を引く
そこで、次第に相手の心理を利用したブービートラップが使われるようになります。
これは、主に撤退後の戦場に仕掛けられます。
勝利した側の兵士達には心の余裕があり、貴重品をクスねたり、武勇伝を証明するお土産を探そうとします。
そんな彼らの興味をいかにも引きそうな品物に、爆弾を仕掛けます。
こんなイメージ
例えば、旧日本軍は、米兵がお土産にしそうな刀や日の丸、芸者の写真等に爆薬を仕掛け、一定の成果を挙げたようです。
またヨーロッパでも、弾薬や食料の補充ボックスや、ポルノ雑誌、お金等が餌として使われていました。
憎悪を利用する
もう一つのアプローチは、相手の憎悪を利用したものです。
ドイツ語で書かれた看板や、ドイツ兵のヘルメット。こういったものを蹴飛ばすと、爆発して足が吹き飛びます。
他にも、壁に掛けられたヒトラーの肖像画や、ベトナム戦争ではホーチミンの写真が飾られた写真立て、国旗等、愛国心の象徴とも言える品物が使われていました。
参考:
効果の高い人物を狙う
ただ、こういった様々なブービートラップの餌食となるのは、所詮は下っ端。
敵により大きなダメージを与える為には、もっと偉い相手に狙いをつける必要がありました。
そこで、考え出されたのが、偉い人だけの習慣をブービートラップに利用するというもの。
具体的にどういうものかというと、
↓
②司令官の個室に使われるであろう部屋の壁に、上品な絵や鏡を少し斜めに傾けて掛けておき、爆弾をセット。
↓
③占領した軍の司令官は、仕事が一段落すると、壁に掛かった絵が曲がっているのに気付く。
↓
④絵を真っ直ぐにした瞬間、司令官の上半身は吹き飛ぶ。
このブービートラップはドイツ軍により考案されたもの。
詳細は不明ですが、かなり高い戦果を上げたようです。
ブービートラップの威力
ブービートラップは、必ずしも敵兵士の殺害を目的としたものではありません。
↓
敵が1人減る。
↓
敵が1人無力化する+看病や運搬により隊全体の士気と機動力が低下
というわけで、むしろ手負いになってもらった方が効果が高いわけですね。
ベトナム戦争で、トゲにウンチを塗ったのも、感染症になる事を期待してのものです。
従って、物理的な威力を高くする必要はあまりありません。
一方で、精神面に与える威力の高さはダントツで、例えばベトナム戦争帰還兵の1/3がPTSDを発症したと言われています。
どこにどんな罠があるかもわからない中で生活してたら、そりゃそうなりますよね。
皆さんが戦場に行く際には、是非この記事を心に留めておいて下さい。