銅を発見した人類すごくね?

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現代の科学の発展は本当に目覚ましいもので、我々は乗り物やPCや家電製品などなど、めちゃくちゃ便利なツールに囲まれて生きています。

しかし、先史時代、だいたい紀元前250万年から紀元前9,000年くらいまでは、人類が使用できるツールは石と木材くらいでした。

初めは石を打ちつけて割って削って加工する打製石器。ようやく4万年前くらいに、磨いて鋭く加工する磨製石器が登場しました。

copilotで生成してみた。すごいねAI♡

そこからさらに3万年後、紀元前9,000年頃に人類は金属を加工し利用することを発見。

およそ250万年ものあいだ、ずーっと石器で頑張ってきたのが、銅の発見からわずか1万2000年で人類のテクノロジーは飛躍的に進化しました。

この人類史における重要なパラダイムシフト、銅の発見は、いつ頃どのようになされたのでしょうか。そして、どのように発展していったのでしょうか。

というわけで今回は、人類との歴史、またの素晴らしさについて見ていきます。

初めての銅

Natural Capper

紀元前9,000年ごろ。まだ文字がなかった時代。

人類は、なんだか普通の石と毛色の違う鈍く光を放つ塊を発見します。それは、自然銅と呼ばれる物質。

自然銅

自然界では、稀に天然の銅の塊を発見することができます。

山岳地帯や丘陵地で見つかることが多く、その形状は板状だったり枝状だったり歪な塊だったりと様々。主に、マグマに含まれている銅の成分が冷えて固まる際に生成されます。

ミシガン州で発見された自然銅。26トン。

この偶然の出会いが、人類の技術を飛躍的に向上させたのであります。

石との違い

いわゆる「硬さ」という点では、石器の方がずっと硬度が高いです。例えば石器によく使われた黒曜石などは、硬度で言うと5。銅は3くらいです。

主な物質の「硬さ」と「伸び率(破断するまでに伸びる度合い)」、「融点(溶ける温度」をまとめると、こんな感じ↓。

原子番号 物質名(元素記号) モース硬度 伸び率 融点
82 鉛(Pb) 1.5 40% 327.5°C
50 すず(Sn) 1.8 35% 231.9°C
12 マグネシウム(Mg) 2.0 25% 650°C
30 亜鉛(Zn) 2.5 35% 419.5°C
79 金(Au) 2.5 30% 1064.2°C
47 銀(Ag) 2.7 25% 961.8°C
13 アルミニウム(Al) 2.9 25% 660.3°C
29 (Cu) 3.0 40% 1084.6°C
28 ニッケル(Ni) 3.5 30% 1455°C
78 白金(Pt) 4.3 20% 1768.3°C
26 鉄(Fe) 4.5 17.5% 1538°C
25 マンガン(Mn) 5.0 15% 1246°C
黒曜石(SiO₂) 5.0~6.0 1%未満 1250°C
27 コバルト(Co) 5.5 10% 1495°C
22 チタン(Ti) 6.0 12.5% 1668°C
24 クロム(Cr) 9.0 7.5% 1907°C
74 タングステン(W) 9.0 5% 3422°C
6 ダイヤモンド(C) 10.0 ほぼ0%

銅は「硬さ」はそうでもないものの、粘り強いのが分かります。叩いたり引っ張ったりして、うまく変形させることができます。

逆に黒曜石などは、わりと硬い一方で、全然伸びません。なので、強い衝撃を与えると変形せずバキッと割れてしまうのです。

基本は叩いて伸ばす。

変形できるということは、思い通りの形に加工できるということ。石器よりもずっと大きな可能性がそこに広がっていました。

こうして、人類は新たな素材である銅を用いて、武器や農具やアクセサリーなど様々なツールを作るようになっていったのです。

冶金の進歩

熱間加工

冶金(やきん)とは、鉱石から有用な金属を取り出す技術のこと。

先に挙げた「自然銅」などは、そう簡単に見つかるものではありません。通常、銅は鉱石の中に含まれる形で発見されます。

銅鉱石

これには岩石成分や硫黄なんかが混じっていて、銅の含有率は1%程度。なんとかして銅だけを抽出する必要があります。

最も基本的な冶金方法は、高温で熱して銅を溶かし出す方法。

この方法を発見した経緯には諸説ありますが、一番ありそうなのが焚き火説。たまたま銅鉱石がたくさん含まれる鉱脈の上で焚き火をしたところ、銅が溶け出すことを発見したという説です。

その他、山火事説などもあり

銅は1084.6℃が融点ですが、200〜300℃で急激に柔らかくなります。

焚き火の温度はだいたい600〜800℃、団扇などでガンガン酸素を供給すれば1000℃を超えますので、銅を溶かすには十分。

この経験により銅が熱で溶けることを学んだ人類は、紀元前4000年頃までにはを発明します。

炉の発明

は、金属加工の歴史において最も重要な発明です。

これもまた古すぎて発見の経緯はよく分かりませんが、

・焚き火で熱すると。銅が柔らかくなった。
・焚き火を雨風から守るために石や粘土で囲ったら、熱がこもってより熱くなった。
・偶然強風が吹いたら、焚き火の勢いが増した。
・木炭はめちゃ熱い(送風で1000℃以上!)

あたりのことを経験的に理解したことで、焚き火よりもっと効率的に銅に熱を与える技術が進歩していきました。

最初は、地面に穴を掘って銅鉱石と燃料をぶち込む、素朴な炉。

最初期の炉

やがて、より熱をこもらせるための囲い、効率的に風を送る送風口、スラグ(銅を抽出した残りカス)を排出する出口などが実装されていきます。

紀元前1500年頃の炉

熱間加工と鋳造

こうして、自然銅だけでなく銅鉱石からも自在に純度の高い銅を手に入れられるようになり、さらに熱を利用することで加工精度も大きく進歩しました。

我々がイメージする昔の金属加工は、鍛冶屋さんが真っ赤に熱されたアチアチの金属を金槌で叩くみたいなやつ。

これを熱間加工と言います。

「うしおととら」13巻より

熱間加工は、金属の結晶構造が緻密になって、強度や靱性(粘り)が向上する一方、あまり複雑な形に加工するのは困難。また品質も職人の腕にかなり左右されます。大量生産にも向きません。

逆に、大量生産、複雑な形状を作るには、鋳造が用いられました。

ターミネーター2より

これは銅をさらに熱して液状になるまで溶かし、型に流し込んで成形する方法。

中に気泡が入るなどして強度が下がるなどのデメリットはありますが、細かい模様を転写できるので、祭具などは鋳造で作られることが多かったと言われています。

ちなみに、アルプス山脈で発見された、通称「アイスマン」と呼ばれる男のミイラ。

クリックでモザイクはずれます。一応閲覧注意ね。

アイスマンの斧

彼は紀元前3300年頃の人物と考えられていますが、彼の持っていた斧は純度99.7%の銅でできています。

つまり、この頃にはすでに人類は高度な銅の精製技術を保有していたということになります。

青銅すごい

なお、こうした冶金技術の試行錯誤の中で、人類は思わぬ副産物を得ました。

それが、青銅

青銅とは

端的にいうと、青銅とは(すず)をだいたい9対1の割合で混ぜたもの。

純粋な銅より2〜3倍は硬く、耐久性に優れる。融点が200℃くらい低く、加工しやすい。というメリットがあります。

青銅のインゴット

青銅が発見されたのは古代メソポタミア、紀元前3000年頃と考えられています。

発見のきっかけは、意図せずたまたまスズを銅鉱石と一緒に炉に入れたら、たまたま普通の銅より硬い銅を得ることができたこと。

これはなんだ」とあれこれ試行錯誤しているうちに、スズを入れると銅が固くなることを突き止めたのです。

純粋な銅は硬さが不十分だし加工も面倒という理由で、紀元前3000年くらいまでは銅器と並行して石器も普通に使われていました。

しかし青銅が登場すると、石器はあっという間に時代遅れとなり青銅製の武器や装飾品に取って代わられたのであります。

ドイツで発見された大量の斧

「踊る少女」。モヘンジョダロで発掘された最古の銅像。

スズは貴重

青銅は、当時としては夢の超合金だったわけですが、その製造に欠かせないスズはわりと貴重な鉱物でした。

錫石。錫の結晶。

地球全体で見ると、鉄が5000億トン、銅が1000億トンくらい存在しているのに対し、スズはたったの数十億トン。

さらに産地が偏っていて、例えばヨーロッパだとイギリスとドイツの一部でしか採取できません。

そのため、青銅器時代にはこの超重要戦略物資であるスズを入手するための貿易が盛んになり、交易路の発展に大きく貢献したことが分かっています。

銅の魅力

最後に、銅という金属がいかに人類とって有用かという話。

現代において最も重要なのが、銅の高い導電性です。電線・ケーブル・端子など電子機器に欠かせません。

また、熱伝導性が高いのも魅力。冷蔵庫やエアコンなど、熱を素早く移動させたい場面で重宝されます。

美観の面でも、独特の光沢や経年で変化する緑青(ろくしょう)が好まれ、装飾品や建築に活用されています。

銅のサビ。美しい青緑色である。

鎌倉の大仏も緑青で覆われています。

また、銅表面は細菌やウイルスを不活化する作用があり、ドアノブや手すり、医療機器などに使われています。

まとめ

銅の発見は、ただ石より優れた材料を見つけたというだけではありません。

冶金技術の発展、合金の発見、交易路の発展など、後世に大きな影響を与えた出来事だったのです。

また、人類にとって銅はめちゃくちゃ有用な金属ですが、近年は深刻な銅不足に陥る可能性も指摘されています。

銅の価格も上がり続けており、直近だと1トンあたり9,532ドル。日本円で138万円くらい。

「世界経済のネタ帳」より

50年後には枯渇するんじゃないかとも言われています。今のうちに銅インゴットでも買っておいてはどうでしょうか。→Amazon:銅インゴット

いつか大化けするかも?

参考文献、サイト様
イラスト図解 世界史を変えた金属
「うしおととら」13巻
一般社団法人日本銅センター:銅利用の歴史
株式会社東京立山製作所:銅加工
技術の系統化調査報告「銅精錬技術の系統化調査」
【誕生秘話】人類が 初めて利用した金属! 銅の歴史 世界史編

コメント

  1. 名無しさん@腹筋崩壊 より:

    相変わらず面白くていい記事!
    地動説の記事復活させてくれ!あれあらゆる地動説の記事の中で1番わかりやすかった!

  2. 名無しさん@腹筋崩壊 より:

    こういうの見ると人類の今の技術も
    長い年月の中での偶然と研究の積み重ねだと実感する

  3. 名無しさん@腹筋崩壊 より:

    おそらく一番身近な青銅いうたら十円玉やろなあ。白銀聖衣とは天と地ほどの違いがあるのだ

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