前回記事では、地球に生命が誕生してから多細胞生物が出現するまで(始生代~原生代末期)の出来事を書きました。
今回はその続き。
とりあえず、現代までの地球の時代を区分すると、
- 始生代40億~25億年前
- 1度目の全球凍結による大量絶滅
真核生物が出現。 - 原生代25億~5億4200万年前
- 古原生代25億~16億年前
- 中原生代16億~10億年前
- 新原生代10億~5億4200万年前
- トニアン10億~8億5000万年前
- クライオジェニアン8億5000万~6億2000万年前
- 2度目の全球凍結による大量絶滅
多細胞生物が出現。 - エディアカラン6億2000万~5億4200万年前→多細胞生物の多様化。今回はここから。
- 顕生代5億4200万年前~現代
- 古生代5億4200万~2億5217万年前
- カンブリア紀
- オルドビス紀
- デボン紀
- 石炭紀
- ペルム紀
- 中生代2億5217万~6600万年前
- 三畳紀
- ジュラ紀
- 白亜紀
- 新生代6600万年前~現代
- 古第三紀
- 新第三紀
- 第四紀←今ここ
- 古生代5億4200万~2億5217万年前
こんな感じになります。
エディアカラ生物群
原生代の最後、エディアカラ紀(6億2000万~5億4200万年前)。
オーストラリアのエディアカラの丘陵で、この時代の生物の化石が大量に見つかった事から、こう呼ばれるようになりました。
エディアカラ生物群は、全球凍結をくぐり抜けて進化して来た多細胞生物。初めて肉眼で確認できる程の大きさの体を獲得しました。
この時代の代表的な生物をいくつか見てみましょう。
切手にもなってます。
3対の腕のような構造を持った生物(もしくはもっと大きい生物の一部かも)。
生物の中で、3対の器官を持つというのはかなり異例。普通は2対か放射状です。謎の多い生物の一つです。
このように、エディアカラ生物群は、現代とは一風変わった独特な進化を遂げていましたが、これらの生物は全て、いわゆる軟体動物です。
硬い殻や骨を持たない生物は、化石にならない。かつて、化石になる事を目指した我々にとっては常識です。
なのに、このエディアカラ生物群は、大量に化石が見つかっています。これは、泥が一瞬にして生物を閉じ込めた為と考えられています。
そして、エディアカラ生物群に見られる種は、極々一部を除き、5億4200万年より新しい地層からは見つかっていません。
つまり、エディアカラ生物群は、ごく短期間のうちに、一気に絶滅した事になります。
5億4200万年前にいったい何が起こったのでしょうか…。
V-C境界
エディアカラ紀は、別名ベンド紀(Vendian)とも呼ばれます。
そして、その次の時代がカンブリア紀(Cambrian)。
この二つの時代の間を、VendianとCambrianの頭文字を取って、V-C境界といいます。
この時に起こったのは、超大陸の形成と分裂です。
大陸が動いている事は、広く知られています。今の世界地図も、一過性の状態に過ぎません。その速度は数cm/年。すごくゆっくりに感じますが、1億年も経てば数千kmは動くわけです。
そんなわけで、大昔から、大陸はくっついたり分裂したりを数億年毎に繰り返していました。このくっついた状態の大陸を、「超大陸」といいます。
そして、10億年前に、ロディニア大陸という超大陸が形成され、6億年前、南北二つに割れた事が分かっています。
元は一つの大陸だったものが、南北に分かれていきました。
大陸同士がぶつかって超大陸ができる時、プレートが地球内部へ沈み込み、その真下でマグマとして溜まっていきます。それがある時限界を迎え、物凄い勢いで地上に噴き出し、超大陸を割り、再び分裂を始めます。
この現象はスーパープルームといいますが、V-C境界で起きたのはこれだと考えられています。
1815年にインドネシアのタンボラ山が噴火した際は、地球の平均気温が10℃下がりました。スーパープルームは、その400倍の規模になります。生物の95%が死滅したとされます。
カンブリアンモンスター
そんなわけで、5億4200万年前にほとんどの生物が死滅し、エディアカラ紀は終焉を迎えました。
続くカンブリア紀は、カンブリア大爆発が起きた事で、よく知られていますよね。5億4200万年前~4億8330万年前の時代を指します。
この時代の地層から見つかる生物の特徴は、
・それまで見られなかった堅い外骨格を持つ生物が多い
・「眼」を持った生物の登場
・現代の生物の様々な種類の身体構造のほぼ全ての原型がみられる
等が挙げられます。エディアカラ生物群には見られなかった特徴が、突如として見られるようになってくるのです。
この急激な進化の原因として、眼の発生は、とても重要と考えられています。
眼が発生した経緯はまだハッキリしていませんが、眼を持った生物の登場により、物凄い淘汰圧がかかりました。
食べる側は獲物を見つけやすい。
食べられる側は逃げやすい。
その為、運動能力を発達させる意味が出てくる。
保護色みたいな特徴を持つようになった生物も出てくる。
このように、眼の発生は、生存競争を加速させる事となりました。
V-C境界を生き延びたエディアカラ生物群の生き残り達は、この競争に付いていけず、食べ尽くされて完全に消滅してしまいました。
オルドヴィス紀末の大量絶滅
カンブリア紀は、気候も安定し、生物達にとってはとても過ごしやすい環境でした。そのお陰で様々な方向に進化し、生物はますます多様性を増す事ができました。
そして、カンブリア紀からオルドヴィス紀(4億8330万年前~4億4370万年前)までの約1億年間、生物達は繁栄しました。
しかし、このオルドヴィス紀末、地球に大量のガンマ線(強力な放射線)が降り注いだ可能性が指摘されています。
ガンマ線バースト
恒星が一生を終えた時、爆発とともに大量のガンマ線を放出します。これをガンマ線バーストと言います。
オルドヴィス紀末は、地球から6000光年というかなり近い位置の恒星が爆発し、およそ10秒間、地球にガンマ線が降り注いだと言われています。
その結果、地球を取り巻くオゾン層が半分破壊され、5年間に渡って紫外線が生物達を直撃。生物種の85%が絶滅しました。
陸上生物の登場と魚類の繁栄
オルドヴィス紀末の大量絶滅の次は、シルル紀(4億4370万~4億1600万年前)、デボン紀(4億1600万~3億5920万年前)と続きます。この時代、外殻を持った無脊椎動物、いわゆる「虫」がついに陸上へ進出します。
海中から陸上へ進出するにあたって課題となるのは、呼吸と重力です。
海に棲んでいるうちは、水の中なので柔らかい体でもユラユラと漂っていればいいてますが、水から出ると、自分の重みがモロにかかってきます。
その為、体にある程度の強度が必要になってきます。そんな時、虫の祖先達は、元々は敵から身を守る為のものであった外骨格を利用して重力に対応し、陸上への一番乗りを果たしました。
デボン紀に移ると、魚類の進化が目立ちます。現在の魚の大部分が属する硬い骨を持った魚や、シーラカンス、サメ等がこの時期に発生しました。
この頃のサメ
また、両生類が陸上への進出を果たし、両生類から、竜弓類(爬虫類の先祖)、単弓類(哺乳類の先祖)等も分化しています。こうして、陸上生物もにぎやかになってきました。
F-F境界
デボン紀後期の約3億7400万年前、またもや大量絶滅が起こっています。海洋生物を中心に、およそ82%の生物種が絶滅しました。
その原因として有力な説は、巨大隕石の衝突です。
スウェーデンに、シヤン・クレーターという直径52kmの隕石衝突跡があります。
輪っかっぽくなってるところ
これが、ちょうどデボン紀後期にできたクレーターです。その結果、激しい気候変動が起こったわけですね。
こうして、地球は全球凍結程ではないですが、氷河期に入ります。
陸上生物の巨大化と、さらなる多様化
2億9,900万~2億5,100万年前。ペルム紀と呼ばれる時代。寒冷な気候の為か、単弓類が大型化していきます。
単弓類とは、哺乳類へと続く系統の生物。この時代、彼らが食物連鎖の頂点に位置するようになりました。
リカエノプス。全長1m。
ゴルゴノプス。全長2m。
エステメノスクス。全長4.5m
エオティタノスクス。全長6m。「夜明けのワニ」というかっこいい学名。
このように、生物達はこれまで以上に豊かな生態系を築きました。ゴキブリなんかも今とほぼ変わらない形で元気に存在していました。
じょうじ。
しかし、またしても試練が降りかかります(1億2000万年ぶり3回目)。
史上最大の絶滅、P-T境界
この全滅は、95%の生物種が絶滅する、たいへん過酷なものでした。
と言いつつ、実はこの大量絶滅の原因はハッキリしていません。分かっているのは次の事だけ。
①今で言うシベリアのあたりで、スーパープルームが起きている。
シベリア洪水玄武岩。この範囲は全部マグマが固まったもの。
②この時代の海は、酸素がかなり少ない状態だった。
③海面が急激に上下した形跡がある。
④超大陸パンゲアが形成された。
これらの事から想像するに、
超大陸パンゲアの形成により、スーパープルームが発生。マグマでかなりの生物が死ぬ。
↓
火山灰で日光が遮られ、寒冷化。
↓
氷河が増え、海面が下がる。浅瀬の海洋生物が死ぬ。
↓
同時に、噴火による大気の汚染と酸性雨による環境破壊。
↓
植物が死ぬ。
↓
地球の酸素が減り、動物達が酸欠で死ぬ。
↓
二酸化炭素が増えた事により、温暖化。
↓
温暖化により氷河が溶け、海面が上がる。
実際のところは未だによく分かっていませんが、もしこんな感じなら、そりゃあ大量に絶滅してもおかしくないですね。
また、まだ断定はされていませんが、この頃に巨大な隕石が落ちた形跡らしきものも見つかっているようです。だとすると、巨大噴火、隕石衝突のダブルパンチだったのかもしれません。
恐竜の時代
大量絶滅の後は、生物界の主役が入れ替わるものです。P-T境界により、原生代は終わりを告げ、地球は中生代へと突入します。
原生代末期のペルム紀は、両生類と単弓類が主役でしたが、中生代は爬虫類が著しく進化を遂げ、「恐竜」が君臨する時代となります。
爬虫類の中でも、特に恐竜達がP-T境界をきっかけに繁栄する事が出来たのは、その呼吸システムによるものと言われています。
今の鳥もそうですが、恐竜の肺は、気嚢という器官により、常に新鮮な空気を取り入れる事ができるようになっており、呼吸の効率が段違いなのです。
そのため、P-T境界での超酸欠状態を乗り越える事が出来たというわけです。
軽めの大量絶滅
こうして恐竜達は、P-T境界以降、少しずつ大型化していき、その勢力を増やしていきます。そして、三畳紀の終わり(2億130万年前)に、やや軽い大量絶滅(76%の生物種が絶滅)がありました。
原因はP-T境界と同じく、主に火山活動による酸欠と隕石のダブルパンチです。その規模も、P-T境界と遜色ないものでした。しかし、その絶滅度合いはかなり軽減されています。流石はP-T境界を生き抜いた者たちですね。
この時、「恐竜」に属さない爬虫類や単弓類は大打撃を受けました。そして、そのポジションを恐竜が奪う事になります。これはひとえに、恐竜の呼吸能力が優れていた事によります。そして、恐竜の繁栄が確定しました。続くジュラ紀、白亜紀に、恐竜に逆らえる生物はいません。
でもやっぱり、定期的に生物は絶滅の危機を迎えてしまうのです。
K-T境界
一番有名な大量絶滅ですね。個体の数で言うと、99%が死滅しています。原因の定説は、巨大隕石の墜落です。
実際、南米大陸ユカタン半島に、チクシュルーブ・クレーターと言われる直径200kmという物凄いクレーターが見つかっています。
この時の衝撃は、冷戦時代にアメリカとソ連が保有していた全ての核兵器の合計の1万倍以上だったとされています。地球って頑丈ですね。
というわけで、少なくともこの隕石が恐竜絶滅のトリガーとなったのは間違いありません。
巻き上げられた粉塵は何年もの間大気に浮遊し、昼間でも真っ暗になる程でした。当然、寒冷化し、植物も光合成できず二酸化炭素が増加。寒冷化が収まった時には急激な温暖化が起きました。
この結果、 恐竜は絶滅。体の小さい哺乳類は、穴に隠れてなんとかやり過ごし、現在に至るまで生物の頂点に君臨する事となりました。
まとめ
と、長々書いてきましたが、ここまでをまとめてみます。
- 始生代40億~25億年前
- 1度目の全球凍結による大量絶滅
真核生物が出現。 - 原生代25億~5億4200万年前
- 古原生代25億~16億年前
- 中原生代16億~10億年前
- 新原生代10億~5億4200万年前
- トニアン10億~8億5000万年前
- クライオジェニアン8億5000万~6億2000万年前
- 2度目の全球凍結による大量絶滅
多細胞生物が出現。 - エディアカラン6億2000万~5億4200万年前
- V-C境界
スーパープルームでエディアカラ生物群はほぼ壊滅。以降、堅い外骨格が流行る。 - 顕生代5億4200万年前~現代
- 古生代5億4200万~2億5217万年前
- カンブリア紀
- オルドビス紀
- オルドビス紀末の大量絶滅
ガンマ線バーストによりオゾン層が破壊され、紫外線により85%の種が絶滅。 - デボン紀
- F-F境界
巨大隕石が衝突して82%の種が絶滅。 - 石炭紀
- ペルム紀
- P-T境界
スーパープルームと巨大隕石の合わせ技で95%が絶滅。
生物が一番キツかった時。 - 中生代2億5217万~6600万年前
- 三畳紀
- 三畳紀末の大量絶滅(軽め)
火山活動と巨大隕石で、種の数で76%が絶滅。
恐竜の勝利が確定。 - ジュラ紀
- 白亜紀
- K-T境界
巨大隕石が衝突し、種の数で75%、個体数で99%が絶滅。
恐竜はほぼ消滅し、鳥として今に残る。 - 新生代6600万年前~現代
- 古第三紀
- 新第三紀
- 第四紀←今ここ
- 古生代5億4200万~2億5217万年前
「最初からこれを貼れよ」とか言わないでね
今回の記事では、顕生代に起きた、特に大きな5回の大量絶滅(通称ビッグ・ファイブ)について見てきました。実際には、その合間にも小~中規模の大量絶滅は発生しています。
しかしながら、何度も何度も絶滅の危機を迎えながら、これまで続いてきた生命の繋がり。
この繋がりを今日まで続けてくれたご先祖様達に対して、改めて感謝の念を覚えます。そして、その最先端が自分だと思うと、なんか申し訳ない気持ちも。
謝りたいと感じてる…。だから感謝と言うのだろう。これを感謝と言うのだろう。
ご先祖様、すまんな。