おうちで作る酒といえば、やはり皆さん梅酒を想像するでしょう。
しかし、梅酒は焼酎等に梅を漬け込んだ混成酒であり、自家醸造酒ではありません。
醸造酒とは原料となる糖を含んだ物を酵母によって発酵させたものの事をいいます。
ちなみに、蒸留の過程を経てアルコールを抽出したものを蒸留酒といいます。
日本酒、ワイン、ビールが醸造酒で、焼酎、ブランデー、ウイスキーが蒸留酒。
大雑把に言えば、日本酒に似た原酒を蒸留すると焼酎、ワインに似た原酒を蒸留するとブランデー、ビールに似た原酒を蒸留するとウイスキーになります。
この醸造酒というものは、作るだけなら意外に簡単な事をご存知ですか?
猿酒
別名「ましら酒」。
本来は日本の古語であり、主に果実を発酵させた醸造酒全般を指す言葉です。
日本には古来の伝説として、猿が木の穴に果実を溜め込み、そこで発酵が起こったのが、果実醸造酒の発祥だという逸話が残されています。
これにあやかり、現在では家庭で作る醸造酒を猿酒と呼んだりします。
もちろん、日本においてはアルコール度数1%を超えた酒を無許可で作った場合、酒税法に抵触する違法行為ですので、気をつけて下さい。
作り方の基本
作り方はいたって簡単。
美味しさを求めなければ、発酵瓶に糖分の多いジュースとパン酵母を入れて放置するだけ。
発酵瓶も用意するのがめんどくさいならペットボトルでも良いです。
ただし、普通のペットボトルでは炭酸ガスが発生するため、膨張し爆発する危険があります。
炭酸飲料用のペットボトルなら飲み口にガス抜きの切れ込みが入っているので、キャップを少し緩めておくだけでガス抜きができるのでこちらを使って下さい。
ブドウジュースならワインもどきに、リンゴジュースならシードルもどきにそれぞれ醸造が可能です。コーラを使えばコーラ酒、レッドブルを使えばレッドブル酒なども可能。
ただし、発酵にパン酵母を使うと、年単位で熟成させなければパン臭さが抜けないので、美味しさを求めるなら東急ハンズ等で専用のワイン酵母などを購入しましょう。
きちんとした醸造用酵母を使い、温度、糖度、発酵期間等々を守れば市販の酒と遜色の無い酒を醸造することができます。
ただし、注意点が一つ。
しつこいようですが、自家醸造酒というのは建前上はアルコール度数は1%未満にしなければなりません。
アルコール度数は原料に含まれる糖分と、発酵にかかった日数によって変わります。
基本的には酵母が糖分を食べてアルコールに変質させていくので、1%を超す前に60度程度の温度で30分間程殺菌して発酵を止める必要があります。止めずに最後まで放って置くと、低くて5%、高くて15%くらいの酒が出来上がってしまいます。
アルコール度数さえ守ればれっきとした合法酒ですので、胸を張って自家製の酒をあおってOK。あまり流通していないお酒を再現して飲む事もできます。
せっかくなので、そんな珍しい酒とそのレシピを紹介していきます。
ミード(ハニーワイン)
ミードは人類最古の酒と呼ばれる、古代ヨーロッパから伝わる酒です。
蜂蜜を使った栄養満天の酒で、精力剤としても使われており、「バカな新婚妻でも作れる」として新婚妻はせっせとミードを作り新郎に飲ませて子作りに励んだと言われ、ハネムーンの語源でもあります。
その簡単な作り方は、蜂蜜にその約2~3倍の水を入れ、酵母を入れて終わりです。
あとは適当な期間放置して、澱引き(酵母の沈殿物の除去)を行えばミードの完成。
ブドウやリンゴを漬け込んでも美味しいので、是非チャレンジしてみて下さい。
ちなみに、自家醸造においては入門用としてうってつけなので、醸造キットが売られていたりします。
シードル(アップルワイン)
いわゆるリンゴ酒。
100%リンゴジュースを使えば楽です。
本格的に行うのであれば、リンゴをミキサーにかけて濾し、リンゴジュースを作って下さい。
基本的に、どの醸造酒も糖分と酵母さえあれば酒に変わるので、これもリンゴジュースに酵母を入れて放置するだけです。
シードルの場合はもう一手間。シードルは発泡ワインなので、醸造が終わった後に酒に炭酸ガスを溶け込ませる必要があります。
とはいえ、その方法も実に簡単で、醸造が終わったシードルに砂糖を1リットルあたり7g入れるだけ。
この工程をプライミングと呼び、この砂糖をプライミングシュガーと呼びます。
砂糖を入れた後は密閉しておけば勝手に炭酸ガスが溶け込み、発泡ワインになってくれます。
その他思いついた果実やジュースの酒
上でも書きましたが、基本的に酵母と糖分さえあれば良いので、砂糖水でも酒は造れます。
なので、「飲んでみたい!」と思った酒を何でも造れてしまうのが自家醸造酒の素晴らしいところです。
マンゴージュースでマンゴー酒や桃ジュースで桃酒を作っても美味しいですし、バナナジュースでバナナ酒などもエキゾチックな味がします。
奇をてらってDrペッパーなどを醸造しても面白いし、ブドウを踏んで潰し昔ながらのワインを作ってみるのもいいですね。
すなわち、自家醸造酒のレシピは無限であり、作る人の発想によって幾通りもの酒を発明することができるのです。
最後に念押し
この記事に書いてあることは、あくまで「アルコール度数を1%に抑えた酒」のことです。
酒税法に抵触するので、醸造する際はくれぐれもアルコール度数には気をつけて下さい。