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天才?未来人?物語としての二コラ・テスラ【後編】

さてさて、そういうわけでエジソンと袂を分かったニコラ・テスラですが、ここからのエジソンとの対立はマスコミを巻き込んだ劇場的なものとなりました。

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電流戦争

犬や猫を交流電流で処刑し、新たな死刑方法として交流電流の「電気椅子」を採用させるなどディスりまくるエジソン。最低です。

一方のテスラは稲妻の様な放電の起こる中で平然と読書をするパフォーマンスを行い安全性を証明します


「稲妻博士」「魔術師」と評された

センセーショナルなこの実験写真は彼に後世まで残るオカルティズムなイメージの萌芽を与えることになるという皮肉も生みます。

エジソンVSテスラのラップ対決

しかし技術は正直でした。あらゆる面で実用性に勝る交流電流が勝利し、その後の世界は文字通り交流電流によって動かされていきます。

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「20世紀を発明した男」

19世紀の終わりから20世紀初頭は、数々の科学者たちによって電気や電波の技術が飛躍していった時代でした。
しかしその中でもテスラの先進性は圧倒的だったといえるでしょう。

モーター・蛍光灯・ラジオ・ラジコン・電子レンジ・テレビなどは全てテスラの発明なしには語れません。

世界初のラジコンボート

また、エネルギーを無線で転送する実験にも成功しています。この技術は現代の誰もが持っている携帯電話やICカードへと発展していきます。

電流戦争を制した彼は、無線電波による情報通信やエネルギー供給を目指していくのです。

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世界システムの夢

もし全ての電気が空中から自由に取りだせるものだとしたら?

あなたの身の回りの電化製品はコンセントにささなくても完全に動き、電気自動車で世界中どこまでも走れる世界だとしたら?

ちょっと想像もつかないですよね。テスラはこんな世界を大真面目に作ろうとしました。

彼が夢見た「世界システム」とは、太陽光で動かす巨大装置と地球そのものとを共振させることによって大気中にエネルギーを満たし、地球上のどこにいても自由に取り出せる様にするという無線エネルギーシステムでした。

それは究極に自由で、平等で、公正な世界と言えるかも知れませんが、この構想のスケールは21世紀に生きる現代のテクノロジーよりも先へ行っています。

100年前のテスラがどれだけ「異邦人」だったかがお分かりいただけるでしょう。

J・P・モルガンの出資により建設された巨大な無線送信塔「ウォーデンクリフ・タワー」。高さ57m。

仮にこれが実現したとすれば鉄道や電気・石油産業にも壊滅的な影響が出るのは必至のこの技術。
現実の利益に生きる当時の有力者は次第に彼の元を離れ、テスラは異端の存在となっていきます。

彼のパトロンの一人であるJ・P・モルガンはアメリカの金融や鉄道を支配する怪物でしたが、テスラの追求する技術が実現すれば、やがて自分の持つ資産が無価値なものになると危惧し、出資をやめてしまいます。

彼の元支援者の一人、JPモルガン。アメリカよりも大きな人物として描かれている。

まさにこれはエジソンと決別した時と同じ構図ですね。技術革新は必ずしも諸手を挙げて歓迎されるものではないのです。

そうして、テスラの世界システムの研究は頓挫してしまいます。

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最終兵器

世界が大戦の混乱へ進む中、後年の彼には怪しい超兵器やオカルト的な色彩が濃くなります。
日本でテスラを知る人たちの中でも、オカルト雑誌やサイトなどからその名を知った人がほとんどではないでしょうか。

例えば、かの有名な『フィラデルフィア計画』では、テスラが考案したテスラコイルが使われたとされています。

Wikipedia『フィラデルフィア計画』

この実験は、1931年、ニコラ・テスラが設立したと言われるレインボー・プロジェクトの一環であった。
当時のレーダーは、「船体が発する、特徴ある磁気に反応するシステムである」と考えられていた。そのため、テスラは、「テスラコイルで船体の磁気を消滅させれば、レーダーを回避できる」と考えていた。

その後、この実験はフォン・ノイマンに引き継がれ、1943年、駆逐艦「エルドリッジ」に船員を乗せ、初の人体実験を行なうこととなる。

1943年10月28日、ペンシルベニア州フィラデルフィアの海上に浮かぶ「エルドリッジ」を使って、遂に大規模な実験が秘密裏に行われた。

当時は第二次世界大戦の真っ只中であり、実験の目的は「磁場発生装置テスラコイル」を使い、「レーダーに対して不可視化する」ことであった。
エルドリッジの船内には多くの電気実験機器が搭載されており、そのスイッチを入れると強力な磁場が発生し、駆逐艦がレーダーからはもとより、肉眼でも認められなくなった。

実験は成功したかのように見えたが、不可思議な現象が起こる。実験の開始と共に海面から緑色の光がわきだし、次第にエルドリッジを覆っていったのである。次の瞬間、艦は浮き上がり発光体は幾重にも艦を包み、見る見る姿はぼやけて完全に目の前から消えてしまった。

「実験開始直後に、駆逐艦はレーダーから姿を消す」、ここまでは実験参加者達の予定通りであった。しかし直後にエルドリッジは「レーダーから」どころか完全に姿を消してしまい、おまけに2,500km以上も離れたノーフォークにまで瞬間移動してしまっていたのである。それから数分後、またもや発光体に包まれ艦はもとの場所に瞬間移動した。

再び戻ってきたエルドリッジだが、驚くべきことに乗員は、次のような惨状に陥っていた。

・体が突然燃え上がった
・衣服だけが船体に焼き付けられた
・甲板に体が溶け込んだ
・発火した計器から火が移り、火だるまになった
・突然凍り付いた(冷凍化)
・半身だけ透明になった
・壁の中に吸い込まれた

また、生き残った乗組員も精神に異常をきたし、エルドリッジの内部は、まさに地獄絵図の如くであった。

唯一、影響を受けなかったのは、鉄の隔壁に守られた機械室にいた、一部のエンジニアたちだけだった。

こうして実験自体は成功したが、「行方不明・死亡16人、発狂者6人」という、取り返しのつかない結果になった。このことに恐れおののいた海軍上層部は、この極秘実験を隠蔽したといわれている。

テスラコイルは確かにテスラの発明で、高周波・高電圧を発生させる変圧器です。
しかし、その原理に不明な点が多く、こういった都市伝説のかっこうの餌食となっています。

実際、「宇宙人と交信している」「地球を割ってみせる」などの奇怪な発言や、晩年の霊界との通信装置開発により、オカルティスト、マッドサイエンティストのイメージはどんどん強まってしまいます。

オカルト信仰の噂はその人の実像を怪しげなものにするのに非常に都合がいいという危険性もありますよね。

果たしてテスラは本当にオカルト的マッドサイエンティストだったのでしょうか。

彼は「戦争を終わらせる兵器」についても語ります。ものすごくざっくり意訳して紹介します。

「もう話し合いや武装解除によって戦争が止むことがない以上さ、戦争が成立しないような強力な兵器を世界中が持てばいいよ。

近づいてきたものを一瞬で破壊するレーザー砲があれば攻撃のしようがなくね?そしたら大国も小国も関係なく難攻不落になるじゃん。

攻撃にも使えるだろって?そこが俺の天才なとこでさ、レーザーってあんま長い距離撃つと威力がなくなるでしょ?だから絶対防御側が有利なワケよ。」

なんだか世界システムと同じで、彼からは現世的な損得や国家主義的なイデオロギーが感じられませんね。あくまで科学という「真理」のみが思考の中心という感じがします。

人間というものに対してはこう述べています。

「宇宙とは止まることのない明快なマシン。スゲーでかいけど、科学原理は宇宙のどこにいても変わらないでしょ(当時は定常的な宇宙観が根強かった)。

人間も宇宙の一部なんだからみんな大した違いはない。外部の刺激に対して反応してるだけなんじゃない?

ただしその反応を平和的で幸福な方向に導く方がいいと思うから、宗教の役割は割と大事だと思うよ。宗教の理想と科学の理想は全然矛盾しない。」

宇宙だろうが精神だろうが気持ちいいぐらいスッパリと科学の世界に収めてしまうこの姿勢こそが、まさしく彼の凄さと誤解の原因だったのではないでしょうか。

ちなみに、エジソンも晩年は霊界との交信にハマッていましたが彼にオカルトのイメージは全くありませんよね。

テスラにつきまとう怪しいイメージは不遇の天才の嘆きなのかそれとも誰かの意図なのか・・・。

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孤独な最期

1943年1月7日、ホテルの一室でひっそりと死を迎えた老人がメイドによっ発見されました。享年86歳。
晩年は白く美しい一羽のハトを愛し、ひっそりと暮らしていたそうです。

彼の葬儀は国葬としてニューヨークの大聖堂で行われ、2000人が参列したと伝えられています。

テスラの葬儀

テスラにまつわる様々なイメージや噂話はともあれ、彼の偉大な発明と業績は、人類に確かな進歩を与えました。
物語としての二コラ・テスラは、21世紀の今も生き続けています。

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