人間、生まれたからには、何か自分が生きた証を残したいと思うものです。
そして、出来ることなら後世になるべく大きな影響を与えたいなんて思ったりもします。
しかし、我々が今から偉人になれるかというと正直ちょっと難しいですよね。
「大器晩成」という言葉もありますが、大抵の人は晩成する前に死んでしまうわけで。
そこで、発想の転換が必要になるのです。
なにも、生きてるうちに教科書に残るレベルの偉業を成し遂げる必要はありません。
死ぬ時のちょっとした工夫で、うまくすれば人類を代表する事すら出来るかもしれませんよ!
人類を代表するとは
人類とチンパンジーが進化の途上で枝分かれしたのが、およそ500万年前とされています。
だとするならば、数百万年先の未来には、人類からさらに枝分れした生物が地球の覇を握っているかもしれません。
当然、その生物(未来人)は、ヒト以上に高い知能を持っているでしょう。我々が狙うべきなのは、そんな未来人の中にいるであろう考古学者です。
数百万年後、かつて繁栄を誇っていたヒトの生物的特徴や文明、文化を調べようとしたら、彼らが頼るものは「化石」しかありません。
今の我々の文明の痕跡(建物とか車とかパソコンとか)は、せいぜい数万年もてばいい方と言われています。道具や装飾品のかけら等といったごく一部を除き、ほぼ全てが風化してしまいます。
なので、自分自身が「化石」になる事に成功すれば、貴重なサンプルとして、きっと丁重に扱われるはずです。
そして、あなたがヒトという種の代表となり、あなたの死に様に対して様々な考察がなされるのです。
化石とは
そもそも 、「化石」という語に明確な定義はありません。
地面の下に埋まっていて、1万年以上前の生物の体や生活痕が保存されているもの
くらいの意味なのです。
ですので、何が保存されているか、どのように保存されているか、といった観点から、いくつかの種類に分かれます。
生物の生活していた様子が残ったもの。具体的には、恐竜の足跡や糞の化石などです。
体化石だけでは、どんな生活をしていたのか、なかなか分かりませんよね。陸で生活していたのか水にいたのか、群れで生きていたのか、何を食べていたのか。そういったことを、生痕化石から推測していくことになるのです。
生物由来の有機物の事。
普通、有機物はあっという間に微生物に分解されちゃいます。しかし、ごく限られた条件で、この有機物が残ることがあるのです。
映画「ジュラシックパーク」で琥珀の中の蚊から恐竜の血液を採取したシーンがありましたが、あの血液も化学化石の一つです。
※蚊自体は体化石
また、化石の中からDNAの断片やタンパク質が見つかる例もあります。ほかにも、動植物の死骸が変質したとされる、石油や石炭、天然ガスも化学化石ですね。
最低限、体化石にはなりたいものですが、基本的に、普通の死体が化石になる確率は超低いです。
0.00001%以下です。
かの有名な、アウストラロピテクス(人とチンパンジーの共通の祖先)の女性、ルーシーの化石ですら、全身の40%程度が化石になった程度。全身が丸々化石になるケースは相当レアです。
ルーシー
生物の死体は、ほとんどが微生物に分解されるか、他の生物に食べられ、残った骨も風雨にさらされるうちに風化してしまいます。
運よく土砂に埋もれることができた、ごくこく僅かな個体だけが、化石になる為の権利を得ます。
化石になっていく過程では、まずは柔らかい肉や内臓の部分の腐敗から始まります。
骨は炭酸カルシウムで出来ているので、そう簡単に腐ることはありません。一番の敵は風化ですが、土砂に埋まっている限りは安心です。
長期間土砂に埋まっている骨は、やがてその成分が変質していきます。泥水が少しずつ骨に染み込んでいくのです。染み込んだ泥水には様々な鉱物の成分が含まれており、それが骨の微細なすき間を充填していきます。
このプロセスを経て、最終的に骨が全て鉱物に置き換わると、見事な体化石になるわけです。
鉱物化していない体化石には、上で挙げた、琥珀の中の虫や、永久凍土に埋れたマンモスの死体なんかがあります。
これらは、腐食を起こす微生物を完全に遮断したために実現されています。
化石になるには
では、具体的にはどうすれば我々は化石になれるのでしょうか。
うっかり火葬なんかされてしまったら、灰になってオシマイです。慎重に作戦を考える必要があります。
体のケア
貝のように殻をもっていたり、虫やエビのようや硬い外骨格を持っていると、化石になれる確率なグンと上がります。
しかし、残念ながら我々はとても柔らかい体ですので、肉や皮膚や毛が残る事はほぼありません。化石として残せる自前のものは、骨と歯だけだと覚悟してください。
日頃からよくカルシウムを摂り、歯をキチンと磨き、丈夫な骨と歯を作る事を心掛けましょう。
死体を埋める場所
死体を埋める場所。これは恐らく一番大事な事です。
我々のターゲットは数百万年後の未来人ですので、長期間に渡り大きな地殻変動が起きにくい安定した場所を考えなくてはなりません。
基本的には協力者に埋めてもらうのが間違いありません。日本国内でも、地域によっては土葬可能です。しかし、日本列島は地殻変動が多く、安定した場所とは言い難いです。また、日本の土地は酸性の場所が多く、骨まで溶けてしまう可能性が高いです。
ですので、アメリカあたりが一番適しているでしょう。
オススメはアリゾナ州にある「化石の森国立公園」という広大な国立公園。ここの土地は、火山灰を豊富に含んだアルカリ性なので、化石になるにはもってこいです。
東京ドーム19,000個分の広さ!
死んだら葬式なんてしないで、速やかにだれか信頼できる人に埋めてもらうのがベストです。
もう一工夫
さて、こうしてなんとか体化石になる事が成功したとしても、まだ十分ではありません。
地球の人口は既に60億人。これからもバンバン増えていきます。こんなにたくさんいると、何人かは偶然に化石になるヤツも出てくるでしょう。
そんなライバル達に差をつけるには、あと一工夫したいところです。
身の回りの愛用品を持ち、洋服も一張羅を着て、これらも併せて生痕化石にしちゃいましょう。
もし可能なら、石でつくった自分のデスマスクなんかも持っておきたいですね。デスマスクが鋳型になって、恐竜の足跡の化石みたいな感じで「生前の顔の化石」を作れるかもしれません。
それと、将来発見された時に、自分のクローンを作ってもらえるかもしれませんので、出来ればDNAが採取可能な状態にしたいところです。
しかし、こればっかりはただ埋まるだけでは厳しそうです。体の一部を琥珀に埋め込むといったような対策が必要です。
琥珀は、木のヤニが長い時間の中で固まったもの。琥珀になるまで最低でも500万年はかかります。木のヤニに体の一部を埋めて、そっと傍に置いておきましょう。
最後にもう一手間
ここまでの準備が出来たら、あとは安心して死んで、化石になるまでジックリ休めばOKです。
ただ、せっかく化石になれたとしても、発見して貰えなければここまでの苦労が水の泡です。
念のため、自分が埋まってる場所は記録に残しておきましょう。
当たり前ですが、電子データはNG。せいぜい30年もてばいい方です。半永久的に保存可能なメディアも開発されているようですが、未来人がパッと見て、なにかが記録されていると分からないと、フリスビーになって終わる恐れもあります。
紙は、保存さえうまくいけば、数百年以上持つ、優秀な記録媒体です。しかし、化石になるという壮大な計画においてはやはり力不足。
我々が入手でき、かつ超長期保存可能な記録媒体は、石です。
ロゼッタストーンみたいなイメージ
自分の埋まっている場所を、直接彫り込んでおきましょう。日本語で書いて理解してもらえるかは不明ですが、地図や座標も併せて記しておけばなんとかなりそう。
というわけで、皆さんの健闘を祈ります。数百万年後にまた。