※けっして業界からお金をもらってるわけじゃないよ。
パチンコ・パチスロのネットでの嫌われ具合は、それはもう、とても凄いものです。
確かに、殆どの駅前に賭博場がある国など他にありませんし、周囲に良い影響を与える施設でないという点に関しては、殆どの方が同意すると思います。
ではサクッと禁止にできるかというと、そう簡単にはいかないんですね。
パチにも、それなりの歴史があって、それなりの理論武装があって、成り立ってるわけです。
パチ屋とは何か
パチ屋は、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(通称:風営法)という法律で規定された、れっきとした一業態です。
風俗営業というのは、「客に飲食や接待などを行い、又は、一定の設備で遊興させる営業のこと」です。
風営法では、この営業形態を8つに分類しています。
一昔前にあった、カップル喫茶がこれ。席が区画されています。
こちらも全国に3店舗。
※もはや画像すら見つからない件
※上記の店舗数は、2014年3月時点での警察発表によります。
なんかダンスにこだわったりしてるところに時代を感じますが、このあたりはまた別の機会に。
で、ここからが本題。
パチ屋はこれに該当します。パチンコ云々ではなく、「遊び方自体が射幸心をそそる恐れがある遊技」をさせるお店に適用されます。どんな遊技かというと、パチンコ、パチスロ、麻雀の事です。
「7号営業」と似ていますが、「遊び方自体に射幸心をそそるつもりはないが、遊ぶことにより結果的に射幸心をそそる可能性がある遊技設備」を設置しているお店が対象。
わかりにくいので、こういう設備が8号だよ、と別に規定があります。
そういうわけで、パチ屋の存在は、「7号風俗営業」としてしっかりと法律で規定されていて、許可さえ受ければ合法的に営業できるのですね。
景品を出す。
法的根拠
通常、パチ屋にはパチンコとパチスロが設置されています。
7号営業では、他にも「じゃん球」や「アレンジボール」といった、今はほぼ絶滅した遊技機でも認可を受けた機種であれば設置可能です。管理人は見たことありません。
じゃん球。麻雀とパチンコを組み合わせた何か。
アレンジボール。
まあとりあえず話はパチ屋に絞るとして、パチ屋は、風営法第23条で、遊技の結果に対して景品を出しても良いとなっています。(現金や有価証券はNG)
- 第二条第一項第七号の営業(ぱちんこ屋その他政令で定めるものに限る。)を営む者は、前条の規定によるほか、その営業に関し、次に掲げる行為をしてはならない。
- 現金又は有価証券を賞品として提供すること。
- 客に提供した賞品を買い取ること。
- 遊技の用に供する玉、メダルその他これらに類する物(次号において「遊技球等」という。)を客に営業所外に持ち出させること。
- 遊技球等を客のために保管したことを表示する書面を客に発行すること。
- 第二条第一項第七号のまあじやん屋又は同項第八号の営業を営む者は、前条の規定によるほか、その営業に関し、遊技の結果に応じて賞品を提供してはならない。
- 第一項第三号及び第四号の規定は、第二条第一項第八号の営業を営む者について準用する。
この「2.」のところに、7号営業のまあじゃん屋と8号営業(ゲーセン・カジノバーとか)は「遊技の結果に応じて賞品を提供してはならない」とあります。
逆に言うと、7号営業のぱちんこ屋だけは、賞品の提供を禁じられていないのです。賞品を出してOK。
ゲーセンの場合
ゲームセンターは8号営業ですから、パチンコ台自体は置けても、遊技の結果に応じて賞品を出すことは禁止されています。
「え。UFOキャッチャーはどうなのよ。」
と思ったあなたは鋭い。
確かに、UFOキャッチャーに代表される「プライズゲーム」は、ぬいぐるみやおもちゃなどの景品を出しています。
しかし実はこれ、本来は違法な行為です。
プライズゲームの歴史は古く、1960年代には既に様々な種類のものが普及しており、ゲームセンターの重要な収入源の一つとなっていました。
しかし、1985年の風営法改正によりゲームセンターは「8号営業」に規定され、賞品の提供を禁止されることとなりました。
困ったゲームセンター業界は、警察に陳情し、風紀を乱さない程度の賞品であれば、提供しても黙認してもらえることになりました。
賞品の価値の目安は、時代の流れとともに少しずつ上がっていきます。
1986年:上限200円
1990年:上限500円
1997年:上限800円←今ここ
ただ、これらは明文化されておらず、当時はあくまでも自主規制という扱いで勘弁してもらっていました。
2001年にようやく警視庁が「風適法の解釈運用基準」という通達を出し、800円以下の賞品ならOKというお墨付きをもらえました。
悪名高い『三店方式』
さて、皆さんがパチ屋について考える時、最も問題視するのは、事実上、換金できるという点でしょう。
いわゆる『三店方式』というやつですね。
三店方式の仕組み
大当たりして出てきた球を、パチ屋で「特殊景品」と呼ばれる四角い物体に交換し、それを店の近くにある景品交換所に持ち込むと、お金に交換してもらえます。
特殊景品
カード風の場合も
この特殊景品の中身は、金です。ゴールド。
上の画像のタイプは、金そのもの。キチンと田中貴金属の鑑定刻印が入っています。
下のタイプは、金のペンダントトップがカードの中に入っています。
要するに、特殊景品は、それ自体が社会的に「価値のある貴金属」になっているのです。
それを今度は、無関係のたまたま近くにある古物商に買い取ってもらったという理屈。
風営法第23条1項の二で、「客に提供した賞品を自分で買い取ること」は禁止されています。しかし、この古物商とパチ屋は、それぞれ経営的にまっっったく無関係なのでセーフ。
というか、少しでも関係があったら、警察はキチンと摘発します。
また、この古物商はパチンコの特殊景品しか買い取りません。この点を問題視する声もたまにありますが、別に何を買い取って何を買い取らないかは古物商の自由ですよね。ブックオフに金の延べ棒を持ち込んでも買い取ってもらえません。
この古物商は、東京だとTUC(東京ユニオンサーキュレーション株式会社)という独立した会社が運営しています。
あちこちにあるTUCショップは、お客さんから特殊景品を買い取り、一度TUCの集荷場に集めます。それをシャッフルし、それを今度はまたまた経営的に関係のない卸売業者へ売却します。
卸売業者は特殊景品専門というわけではなく、だいたい、パチ屋の一般景品(ジュースとか飴とかライターとか)なんかも扱っていて、その数ある景品の一つがこの特殊景品となっています。
まとめると、「パチ屋」と「TUC」と「卸売業者」という3つの店を、特殊景品がグルグルまわっている形になります。だから、三店方式というのです。
三店方式の理屈
この仕組みが合法である為のキモは、2つあります。
これは実際に、本当に関係がありませんし、お互いに何の働きかけもしていません。
各都道府県の条例で、「景品を第三者に買い取らせてはならない」と決められているので、働きかけたら捕まるわけですね。実際、手数料をケチって自分で景品を買い取ったパチ屋は、一瞬で摘発されています。
通常、パチ屋と古物商はセットで街中にありますが、パチ屋の側から、「うちの特殊景品を買い取るお店を作ってよ」などと働きかける事は絶対にしません。
パチ屋の新規出店情報を入手した古物商が、自主的に景品買取所を出店し、商行為をしているだけといった形式になっています。
これは、「3店の間を同じ景品がグルグル回っているだけじゃないか!」というツッコミへの対策です。シャッフルしてるから、同じ景品じゃないよというわけですね。
この理屈は、1968年に福岡高裁でお墨付きをもらっているので、この判例が覆らない限り、合法です。
こうしてみると、三店方式は、鉄壁のガードのようにも思えます。
そもそも賭博なのか?
「実際に換金できるんだから、賭博に決まってんだろ!」と言いたい気持ちは痛いほど分かります。
分かりますが、そう単純な話でもないのです。
日本では、競馬、競輪、競艇、オートレースの4つ+宝くじ系のみが、合法的な賭博です。これらは、それぞれ競馬法とか自転車競技法といった法律により規定されています。
逆に言うと、パチンコにパチンコ法なんてありませんから、法律的には賭博ではないとされているのが現状です。
賭博ではなく、あくまで遊技なんですね。
法律上の賭博の定義は、
であります。
そもそも、パチンコは遊技の結果に応じて景品を出しているのであって、利益の得喪を客と店が争っているわけではありません。
さらに、一見パチンコという遊技は「偶然」に支配されているように見えますが、そうではないという言い分もあるのです。
一般的なパチンコの仕組みを簡単に書くと、
球がヘソに入ると内部で抽選が行われる。
当選すると、アタッカーという役物が開き、そこに球を入れるとたくさん球が出てくる。
この一連の流れの中で、パチンコという遊技の本質は何かというと、球を役物に入れるという点なのです。
「アタッカーを開ける為の抽選を受ける」という点は、あくまでおまけ。
あくまでハンドルによる調整という「技術介入」により、偶然ではないと解釈されています。
パチスロも同様です。
ラスベガスにあるような、本来のスロットマシンは、レバーをガチャンとやって、あとは自動的に止まるのを待つだけです。
一方、日本のパチスロは、自分でポチポチポチとボタンを押してリールを止めます。
この時、特定の役に当選した場合、その図柄を狙う事になります。これを目押しといいいます。
この目押しが「技術介入」なので、偶然性を排除しているという理屈になります。
最近は、中→右→左みたいに、特定の押し順でリールを止めた時だけ入賞する方式もあります。これも、いちおう「技術介入」ではあります。
苦しい解釈ですが、こんな理屈で、「賭博」から少しでも距離を置こうと努力しています。
よくある話題
ここまで、長々とパチ屋の合法化対策を見てきました。
こうしてみると、次のような指摘は何の意味もないことが分かりますね。
違法賭博だ!
前述の通り、風営法の規制をきちんと守って営業していますので、「違法」ではありません。
また、風営法を守っている限り、パチンコは「賭博」ではなく「遊技」です。
ゲーセンが三店方式やったら逮捕されるのに、なんでパチ屋は許されるんだ!
ゲーセン的な施設は、風営法の8号営業です。従って、遊技の結果に応じて賞品を提供することは認められていません。
三店方式とか関係なく、ゲーセンが客に賞品を提供した時点でAUTO。8号営業で景品を提供する唯一の例外は、ゲーセンのプライズゲームだけです。
〈ヽ`∀´〉 が悪い。
実際、パチンコに関わる企業の経営者に韓国、北朝鮮国籍の方々が多いのは事実です。その割合は諸説ありますが、6~8割はそうみたいですね。
ただ、その話と合法性の話はあんまり関係ないので、今回はあまり突っ込みません。
それと、パチンコと朝鮮関連の都市伝説の一つに、
今でもパチンコ店が駅前に多いのは、戦後のドサクサにまぎれて駅前の一等地を不法占拠したからだ
というものがあります。この話自体はもはやネット上の常識となりつつあります。
が、実際に「××駅の○○という店」みたいに具体例が示された事はありません。
また、東京の中心地ならまだしも、戦後まもない時点では、駅前の土地というのは必ずしも一等地とは言えない状態でした。この話が本当なら、「随分と先見の明があったんだなぁ」という事になります。
そんなわけで、この話の信ぴょう性は微妙…。捏造の可能性が高い気がします。
もし具体例をご存知の方がいらしたら、是非教えてください!是非!
警察からの天下りを受け入れて、癒着して三店方式を見逃してもらってるんだろ?
パチンコ業界が警察からの天下りを受け入れているのは事実です。
警備会社が警察からの天下りを受け入れているのは事実です。
ゼネコンが警察からの天下りを受け入れているのは事実です。
金融・証券会社が警察からの天下りを受け入れているのは事実です。
鉄道会社が警察からの天下りを受け入れているのは事実です。
というか、警察からの天下りを拒否している業界ってどこでしょう?
確かに、三店方式の進化の過程で、警察からの天下りを受け入れる事で、警察からの指導や助言、意見交換、調整がスムーズだったのは間違いありません。
そうじゃなきゃ天下りを受け入れる民間企業なんているわけないですからね。
ただ、天下りという仕組みが存在している以上、それを利用するのは企業としては当たり前なのかも。
本当に、完全に合法なのか?
ここまで、パチンコ業界の論理を長々と書いてきました。彼らもそれなりにけっこうちゃんと理論武装しているのがお分かり頂けたと思います。
しかし、実際には、明らかにグレー(少なくとも白ではない)な部分もあります。
古物商?
例えば、三店方式において、景品交換所は古物商です。当然ですが、古物商にもいくつか法律上の規定があります。
その中で、対価の総額が1万円を超える取引は客の身元確認が必要という規定があります。
実際に換金をする時に身分証を提示する客などいるわけないので、景品交換所は「身元不明の客が、複数回交換した」という形にして、逃れています。
釘調整?
パチンコ台は、メーカーが警察の検定を受けて許可をもらい、それをホールに設置しています。
厳密には検定を受けたのと寸分違わない状態で設置しなければなりませんが、それでは出玉のメリハリが効かなかったり、利益が少なかったりするので、ほぼ例外なく釘をいじって出玉を調整しています。
これは「台のメンテナンスをしてたら、たまたま釘が曲がっちゃった♪」みたいな建前でやっているわけですが、限りなくグレー。
これまでクドクドとパチンコの合法性を書いてきましたが、パチンコの違法性を追求しようとする場合、おそらくこの辺しか突っ込みどころはありません。
というわけで、現時点では、「違法だー!」という論点でパチ屋を追求するのは無駄っぽいです。
やはり、草の根運動的に啓蒙してパチンコユーザーの目を覚まさせ、数を減らしていくのが現実的ですかね。
というか、パチンコの話は中々奥が深くて語り尽くせないので、またそのうち記事書きます。興味ない方はごめんなさい。