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ダイヤモンドは永遠の輝き(笑)

ダイヤモンドは永遠の輝き
ー A Diamond is Forever ー

デ・ビアス社が考案したこのキャッチコピーは、歴史上最も成功したマーケティングと言われています。

永遠」という言葉により、女性がダイヤモンドを転売するのを抑制し、中古品市場への流通による価格の下落を防ぐ。

さらに、「ブランド名」ではなく、「商品の価値」だけを表現し、ダイヤモンドこそが最高の宝石であると人々に刷り込むことに成功しました。

こうして創り上げられた、ダイヤモンドの「価値」。実際はどうなのでしょうか。

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ダイヤモンドの価値

一般的に、宝石の価値は「希少性」「美しさ」「丈夫さ」によって決まると言われています。ダイヤモンドがその価値に見合いほどの性能を持っているのか、少し見てみましょう。

希少性

まず、ダイヤモンドはさほど貴重ではありません。

四大宝石の年間産出量を見てみれば一目瞭然。

ダイヤモンド:1500万カラット
エメラルド:300万カラット
サファイア:2000万カラット
ルビー:50万カラット

ルビーやエメラルドの方が、よっぽど希少性が高いのです。

事実、ダイヤモンドを質屋に売ると、驚く程の安値で買い叩かれます。これは、ダイヤモンドの流通量が多すぎるという事に他なりません。

美しさ

これはもう文化によって様々。美の基準は人それぞれです。

なのですが、ダイヤモンドが美しいとされるようになったのは、比較的最近の事です。

例えば、中国では透明な鉱石は価値が低く、翡翠のような非透明もしくは半透明な鉱石こそ宝物でした。

中国ではこれを「玉」と呼びますが、ダイヤモンドは「金剛石」という呼び方。所詮はという扱いだったのです。

丈夫さ

宝石は宝物。
長期にわたって保存するのが基本です。

そのため、傷がつかない壊れないというのはたいへん重要です。

ダイヤモンドが地球上で一番硬い物質というのはよく知られていますが、これは「傷のつきにくさ」を表しています。

例えば、ダイヤモンドとかルビーとかサファイアとか、色々な種類の宝石を一つの箱に入れて、振ってみましょう。

そうすると、それぞれ自分より硬い宝石とぶつかるので、硬度が低い宝石ほどたくさんの傷がつきます。無傷なのは一番硬いダイヤモンドだけ。こういった点では、ダイヤモンドは確かに優れています。

しかし、「壊れにくさ」はまたちょっと別の話。

例えば、厚さ1mmのガラス板と、厚さ1mmのアルミ板をイメージしてみて下さい。

傷のつきにくさに関しては、ガラスの方が上。
ガラス板を爪で引っ掻いても表面に傷はつきませんが、アルミ板なら簡単に爪で傷をつけることができます。つまり、アルミよりガラスの方が硬いのです。

今度は、ガラス板とアルミ板を折り曲げてみましょう。
すると、ガラス板は簡単にパリンと割れてしまいますが、アルミ板はグニャッと曲がるけど元に戻ります。
これは、ガラスよりアルミの方が粘り強い(=靭性が高い)事を示しています。

硬い物質は脆く、軟らかい物質は粘り強い。これはどんな物質にも共通の決まり事です。

ダイヤモンドは超硬い分、脆い。鉄のハンマーでぶっ叩けば、ダイヤモンドは簡単に粉々になります。

この粘り強さは、ダイヤモンドよりもルビーやサファイアの方が、実は優れていたりします。

また、ダイヤモンドは熱にもあまり強くなく、条件が整えば800℃程度で燃えてしまいます。火事に遭ったらオシマイです。

一方、ルビーやエメラルドは2050℃、サファイアは1410℃で溶けますが、燃える事はありません。

ということで、ダイヤモンドの総合的な「丈夫さ」は、そこまでではないのですね。

ダイヤモンドの価値は

以上の点を踏まえると、「希少性」はそうでもない。「美しさ」は人による。「丈夫さ」はむしろイマイチ。なぜダイヤモンドが最高の宝石とされているのか、不思議ですね。

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ダイヤモンドの歴史

ダイヤモンドが発見されたのは紀元前の事。

紀元前3世紀頃のインドの文献に、既にダイヤモンド交易について書かれています。

その交易によりダイヤモンドは世界に広がっていきますが、やっぱり当時のヨーロッパでの宝石の序列としてはかなり格下。

ルネサンス期には「ルビーやエメラルドの8分の1の価値しかない」等と言われていました。

というのも、ダイヤモンドは、硬く加工が難しい上、カットをしないとあまり綺麗ではありません。

原石

14世紀に入ると、カット技術は次第に向上していきます。

ダイヤモンドの反射や屈折率を数学的に分析し、一番輝きを放つカットの角度や面の形を算出するようになり、ダイヤモンドも宝石としての格を徐々に上げていきました。

ダイヤモンドは、カットする事によりはじめてキラキラする

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ダイヤモンド業界

ヴェニスの商人

当時のダイヤモンド流通の中心地は、ヴェニスでした。

ヴェニスと言えば、金貸しシャイロックみたいなユダヤ商人。原石の売買、加工、販売は全てユダヤ商人により行われていました。

しかし、当時ダイヤモンドはインドでしか採れなかった為、流通量は少なく不安定で、安定した産業とは言えませんでした。

巨大鉱脈の発見

1730年、ブラジルでダイヤモンド鉱脈が発見され、それまでと比べるとケタ違いに安定した供給が可能となりました。

そして採掘し過ぎた結果、1860年にはブラジルのダイヤモンドは枯渇してしまいます。

しかし、今度は南アフリカでダイヤモンドの大鉱脈が発見されます。

発見のきっかけは、川で遊んでいた地元の子供。たまたま見つけた綺麗な石が、ダイヤモンドだと判明しました。

「ユーレカ(Eureka)」と名付けられた。ギリシャ語で「我発見せり」

これを機に、南アフリカはダイヤモンドラッシュに突入。世界中から探鉱家が集まるようになりました。

キンバリー・ビッグホールと呼ばれる有名なダイヤモンド鉱山も、この時に採掘されたものです。

人類が掘った最大の穴、キンバリービッグホール。
表面積17ヘクタール、円周1.6キロ、直径465メートル、縦坑は深さ1,097メートル。人間の欲ってすごい!

セシル・ローズ

このダイヤモンドラッシュでツルハシを持った男たちの中に、後に南アフリカの王となるセシル・ローズもいました。


悪そうな顔

有名な風刺画

セシル・ローズは、採掘したダイヤモンドを元手に鉱山の権利を買い、さらにロスチャイルド家から融資を受けて、デ・ビアス鉱業会社を設立しました。

デ・ビアス鉱業会社はその豊富な資金力により、南アフリカでのダイヤモンド鉱山をほぼ全て支配下におき、最盛期には世界のダイヤモンド産額の9割を独占するようになりました。

この圧倒的経済力が後の南アフリカ会社設立へと繋がっていくのです。

デ・ビアス社は、アパルトヘイトで投獄された囚人(黒人)に採掘をさせるなど、地の利を最大限に活かした悪どい経営を行い、その規模をますます拡大していきます。

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ダイヤモンド産業の支配

デ・ビアス社は、豊富な資金力を背景に、ダイヤモンド業界を狡猾に支配していきます。

支配のシステム

まず、デ・ビアス社は、ダイヤモンド生産者の組合を作り、価値の下落を防ぐ為に生産量を調整させます。

次に、生産されたダイヤモンド原石は、一旦すべて関連会社が買い上げて、大きさや品質を分類。

それを、別の関連会社が各販売会社に売り捌くという感じ。

ダイヤモンドの原石の生産から販売までを支配し、ダイヤモンドを買おうとする場合、必ずデビアスを通す仕組みを構築したわけです。

売り方

デ・ビアスのダイヤモンドの売り方は、「サイト」と呼ばれる特殊な方法が取られています。

年に10回行われるサイト。

これに参加する資格を持つ業者は、サイトホルダーと呼ばれます。

サイトホルダーは、「どんなダイヤモンドをどれくらい買いたいか」を、事前にデ・ビアスに伝えます。

デ・ビアスはいちおうこの要望を受け、宝石が入った袋をサイトホルダーに渡します。サイトホルダーは、その中身を見て袋ごと買うか買わないかを決めます。

中身の選別は出来ませんし、価格の交渉も出来ませんし、ダイヤモンドの質にも量にも文句もつけられません。袋ごと買うか、買わないか、それだけです。

こうしてデ・ビアスは、ダイヤモンド産業の支配者としての地位を確固たるものにしていきました。

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ダイヤモンドの広告戦略

冒頭のデ・ビアスのキャッチフレーズでも触れましたが、今、我々がダイヤモンドに対して持つイメージは、ほとんどがデビアスのマーケティングによるものです。

我々には関係ありませんが、普通の日本人なら婚約指輪はダイヤモンドです。

これは、ロマンス映画で結婚祝いとしてダイヤモンドを使わせたデ・ビアスのマーケティング戦略の結果です。「給料3ヶ月分」という目安もデ・ビアスの広告がきっかけです。

また、

有名人を使い、雑誌や新聞中にダイヤモンドのロマンチックな面を想起させるストーリーを掲載する

ファッションデザイナーや流行仕掛け人を雇い、ラジオやテレビで流行を広める

ダイヤモンドを広めるために英国王室に献上する

といったキャンペーンを行うことにより、ダイヤモンドそのものの価値を人々に刷り込む事に成功します。

デビアスは既にダイヤモンド産業の大半を独占していたため、自社ブランドを売り込む必要などありません。

例のシステムで流通量をコントロールするだけで、ダイヤモンドの価格をコントロールする事が可能なのです。

最近のダイヤモンド市場

とはいえ、かつて90%ものシェアを持っていたデ・ビアスも、現在は45%程度に落ち込んできています。

理由は、デ・ビアスのシステムを通さないダイヤモンド供給会社の台頭です。

特にロシア系企業はデ・ビアスの支配を良しせず、独自の流通ルートを確保するようになり、デ・ビアスの影響力もかなり落ちてきているようです。

とはいえ、未だ最大のシェアを持つデ・ビアス。

ダイヤモンドを資産として保有する人々にとっても、価値を高く保つのは歓迎すべきこと。ダイヤモンド価格のコントロールはまだまだ続くことでしょう。

外人のビジネス戦略のスケールの大きさには毎度驚かされます。

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