スティールパン
「20世紀最後にして最大のアコースティック楽器発明」と呼ばれるスティールパン。
一度聴いたら忘れられないピースフルな音色を持つあの楽器は、抑圧の歴史の中から生まれました。
トリニダード・トバゴ共和国
場所はここです
植民地主義の時代、カリブ海に浮かぶトリニダード島とトバゴ島にも次々と西洋諸国の支配者達がやってきました。
島には先住民がいたのですが、もちろんそこはお構いなし。特にイギリスは有名な三角貿易(繊維製品→奴隷→砂糖)の一端として、この地にもプランテーションを作り、アフリカからの奴隷が大量に押し寄せます。
厳しい労働の中で、彼らは動物の革を張るなどしたアフリカン・ドラムを叩き、祝祭を行っていました。
が、これが野蛮だという理由でイギリス当局によって法律で禁止されてしまいます。
演奏によって奴隷達が一か所に集まることは支配者側から見れば快いものではないでしょうし、多分うるさかったんでしょう。
ドラムがダメならばと、色々な長さに切った竹を叩いて音を出す「タンブー・バンブー」という楽器を使っていたのですが、こちらも1937年に禁止されます。
こちらはちょっと武器に使えそうな感じもあったし、きっとうるさかったんでしょう。
ですが、法律は人の心まで縛ることはできません。彼らは身近にあったラム酒の瓶、バケツ、ビスケット缶などを叩きながら音を刻み続けて行きました。
その後アメリカによってトリニダード島に産油施設が作られると、簡単に大きな音のでるドラム缶を叩き始めるのは当然の帰結ですね。
楽器「スティールパン」の誕生
音階の配置はこうなってるらしいです
ある日のこと。ウインストン・スプリー・サイモンという男がドラム缶で音階を奏でることを発見しました。
以後改良が重ねられ、テナーパン、チェロパン、ギターパンなど様々な音を出すパンが作られていきます。
ここからは、是非動画でご覧ください。
音階はこうやって作ります(ざっと流してみてください)
いかにもスティールパンっぽいメロディ、その1
その2
パノラマ
さて、タイトルで「死ぬまでに一度は聴きたい」と言ったのはここからの話です。
今では国民楽器として認められトリニダード・トバゴの象徴として愛されているスティールパン。
このパンのみで構成された100人規模のオーケストラが一同に会して演奏を競う「パノラマ」というイベントをご存じですか?
きっとこれまでのスティールパンのイメージを一新すると思います!
ヘッドホン&大音量推奨ッ!
‟It’s Show Time”
‟Gold”
‟More Love”
いかがでしょうか。
こうしたチームを編成する「パンヤード」は今でも貧困なエリアの中にあります。
なのにどうしてこんなに明るく、躍動的なんでしょうか。それが不思議でなりません。
パノラマの開催されるカーニバルは毎年2~3月に開催されています。
今からなら来年のカーニバルに行く準備は十分間に合いますよ。
きっと現地で聴く体験は人生で最も素晴らしい時間のひとつになると思います!